Japanese and English.

    スペースブロックの概念とその実現メディア
    スペースブロックによる設計方法その1
    .
    ○日色真帆、小嶋一浩、岩崎健一郎


    Conception of Space Blocks and its Realization
    A Design Method by Space Blocks Part 1
    Maho hiiro,Kazuhiro Kojima,Kenichiro Iwasaki

    The Space Block is a notation system of a void surrounded by walls and floors with people and trees in it.
    The purpose of this research is to develop a design method of the elevated person-environment system using space blocks. By introducing these blocks as expression of scenes of daily life, design process is divided into creating blocks and linking them.
    For realizing space blocks, we applied scale models and computer graphics, and other media. Criteria of these media are as follows,
    1)limits and difficulty of creation and interpretation,
    2)operationality, and
    3)expression of scenes, personalities, and events.


    1. 研究の目的
    立体化した人間環境系の設計方法
     この研究は、スペースブロックという空間の表記法を提案しそれを立体化した人間環境系に焦点を当てた設計方法として展開することを目的としている。

     複雑に立体化しても保持され、むしろ立体化ゆえに得られる良質な人間環境系を探ることは、これからの都市居住の方向性を示唆するであろう。さらに人間環境系を創造する機会は誰もが持つべきであるから専門家以外にも使える方法を目指す。同時に、専門家の陥りがちな常套的設計への批評的方法として利用することを意図している。

     本編では、スペースブロックの概念を明確にし、設計ツールとして実現するメディアについて考察する。


    現実の場面(リスボン・アルファマ地区)とそのスペースブロック化


    2. スペースブロックの概念
     スペースブロックは、壁などに囲まれた空隙部分を、中の人間や樹木ごと取り出してブロックのように扱う空間の表記法である。比喩を使えば、金魚鉢を取り去って金魚や水草の入った水を残したようなものである。そのつくり方は、立体的なネガポジ反転をして囲まれた空気の実体化することと言い換えることもできる。

     このスペースブロックを、生活の中のまとまりをもって捉えられる場面を表すものとして利用する。演劇や映画で一つの場面を表すのに、大道具、小道具から登場人物までが一体となるように、スペースブロックには人間や樹木なども含まれている。

     同じ理由で、境界面には壁や床の素材感が表されているのが望ましい。

     スペースブロックは、外部空間にも内部空間にも適用できる。外部空間の場合は、上部に空に相当する架空の境界面がある とする。また、ブロックとして取り出すためには、そもそも連続している空隙部分を切断するので、やはり架空の境界面が発生する。

     このようなスペースブロックは、実在する都市空間や建築空間から生活の場面の標本として切り出すこともできるし、未だない場面に相当するものとして新たにつくり出すこともできる。


    3. スペースブロックとスペースブロックネット
     普通のスペースブロックには人間が通過できる出入口がある。これら出入口どうしをつなげば、複雑に立体化した空間群を考えることができる。この空間群をスペースブロックネットと呼ぶことにする。 このようにスペースブロックという単位を分節して導入することで、設計行為をスペースブロックをつくり出すレベルと、スペースブロックどうしをつなぎ合わせてスペースブロックネットをつくるレベルに分けて考えられる。

     この2つのレベルは操作する記号の性質に差があり、スペースブロックレベルは、人間とそのとりまく環境が人間環境系として一体化していて、不連続な構成要素の関係としては表せない濃密な記号を扱うのに対し、スペースブロックネットのレベルは、スペースブロックとう不連続な記号間の関係を扱う。

     レベルを分けることで、スペースブロックによる設計プロセスは、次の3段階のループとして進行する。

    1)スペースブロックの作成

    2)スペースブロックネットの作成

    3)ブロックとネットの再定義(分割、合成等)


    4. 実現メディア:模型、コンピュータ
     スペースブロックの概念を設計ツールとして実現するためには、

     1)模型(3次元的)

     2)CAD利用のインタラクティブなコンピュータグラフィックス(視覚による2次元的表示ではあるが時間軸に沿い解読することで疑似3次元的)

     3)スケッチや図面(視覚的で2次元的)

     4)アニメーション(視覚による2次元表示であるが、あらかじめ決められた時間に沿う解読が必要)

     5)文章(文字を用いやはり定められた解読が必要)

     6)語りや歌(音声を用いやはり解読方向が決まっている)

     などの様々なメディアやそれらの組合せが利用できる。

     実現されるスペースブロックでは、それが表す場面に比して、多くの特徴が省略され、操作性のよさなどの特徴が付加されるが、メディアによりその省略や付加の内容や度合いが異なる。そこで実現メディアの評価軸として、

     a)作成や解釈における自由度や容易さ、

     b)操作性:複製、変形、持ち運び、組み替え、積み重ね、さわること、一覧(一度に全部がわかる)の容易さ、

     c)場面の雰囲気の表現性:に入った感じ、空間のかたち、スケール感、素材感、光、風、音、においの表現の容易さ、

     d)登場人物の表現性、

     e)出来事の表現性、を用いる。

     これまでに、模型とCGの二種類のメディアによる実現を試みた。それぞれ上の評価軸でみると、次に示すように一長一短がある。

     1)模型(透明の樹脂、プラスチック透明板、段ボール)

     a)作成・解釈:作成に時間を要する、自由度は高い。

     b)操作性:組み替え、積み重ね、さわること、一覧性に優れている。複製、変形、持ち運 びは困難。

     c)雰囲気の表現:空間のかたちの表現に優れる。中に入った感じ、スケール感、素材感、 光の表現に習熟が必要。風、音、においの表現は困難。

     d,e)登場人物、出来事の表現は困難。

     2)CAD利用のコンピュータグラフィックス

     a)作成・解釈:習熟後は容易、自由度も高い。

     b)操作性:複製、変形、持ち運びが容易だが、現在のCADではブロックどうしが重なり合うので、組替え、積み重ねが困難。さわること、一覧性に劣る。

     c)雰囲気の表現:空間のかたち、中に入った感じ、スケール感、素材感、光の表現は習熟すれば容易=風、音の表現には工夫が必要。においの表現は困難。

     d,e)登場人物、出来事の表現は困難。

     スペースブロックが他の設計ツールと異なる特徴は、空間のかたちを明確に示すことと 、ブロック作成と組合せの二つのレベルに明確に分けることがあげられる。模型とCGはその両方の表現に優れているが、スケッチや図面で表すには特別な工夫が必要となるだろう 。

     アニメーション、文章、語りや歌は、空間のかたちの表現は困難だが、二つのレベルを表す(語りや歌では困難)ことは可能だろう。一方でこれら3種類は、模型やCGが不得意とする風、音、においといった雰囲気の表現や登場人物、出来事の表現には優れている。

     そこで、設計プロセスの中で、それぞれ特徴の異なる実現メディア間で変換をすることで、問題とその解決とを共に発見していくことが効果的となるだろう。


    5. 考察
     スペースブロックは、直観的に行われている設計の初期段階を外在化し、専門家と専門家以外の人々がコミュニケーションをもつ可能性をもっている。

     注)スペースブロックのアイデアは、シーラカンス一級建築士事務所と行った93年度ハウジングアンドコミュニティ財団若手デザイナー助成「立体化した住空間に関する研究」から得られている。

     CGは、93年に神戸芸工大の学生により基礎データが作成され、テクスチャマッピングやウォークスルーは、(株)バスの浜野慶彦氏(現AA Lab)により94年になされた。その内容はバスによってCD-ROMにまとめられた。

     模型のうち、樹脂のものは94年に東京理科大小嶋研の学生により作成された。

     プラ板のものはシーラカンスが作成し94年のGA JAPAN LEAGUE展に出品した。段ボールのものは94年から95年にかけて神戸芸工大の学生により作成されている。


    参考文献

    日色真帆、小嶋一浩 1996 SBによるデザインスタディ 建築文化 96年3月号 82-87

    日色真帆 1995. 場面のブロックを積んで建築をつくる 建築雑誌 95年1月号 38-39.

    (株)BUS 1994. Architectural Collections from BUS.(CD-ROM)

    シーラカンス 1994. 立体化した住空間に関する研究 ハウジングアンドコミュニティ財団報告書.

    シーラカンス 1994. スペースブロックワールド GA JAPAN 11.106-108.

    写真 中川敦玲(建築文化)

    作品中の学年は95年時点


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